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倫子
このポッドキャスト『まなびのはなし』では、大人の学びをサポートしているふたりが、それぞれ見つけた、考えたことを話したいから話しています。
では、よろしくお願いします。
えみ
お願いします。第1回なので、今日はお互いの自己紹介からいきましょう。
倫子
それぞれ大人の学びに仕事として関わってるんですけど、そもそも「学びの道」っていうか、教育や学びに、えみさんはいつから関わっているんですか。
えみ
「関わっている」でいうと、かれこれ25年になります。笑
倫子
笑 すごい。
それを学びはじめたのは、さらにどのくらい前なんですか。それとも、学びは後で、関わりはじめたのが先?
えみ
おそらく学びは後だと思いますね。
倫子
あぁ、じゃ仕事にしているのが25年。
えみ
うん。英語を教えて「先生」とか呼ばれていたけど、学びなんて全然考えたことなかったです。
学びの定義にもよりますけど、いま振り返って、私の中で学びがはじまったのは、アメリカに留学して2、3年経ってからかなと思います。
倫子
その「学びを意識したとき」というのは何年前のことですか。
えみ
16年くらい前ですかね。
倫子
じゃあ、働いて9年くらい経ったとき。
えみ
そう。それでようやく自分の中で学びがはじまった気がします。
倫子
なるほど。
えみ
倫子さんはどうですか。自分の学びは、どこが起点だと思っていますか?
倫子
たぶん仕事が先でした。13年前に金融から人材育成に転職して、そこで初めて学びの世界に入りました。
その後、2年くらい経ったときに、アメリカに留学して、教育学部で改めて「人はどう学ぶか」を学びました。
そこからずっとそういう系の仕事をしたり、勉強をしています。
えみ
働きはじめてから「学びってこういうこと」が、なんとなくわかってきたという点が共通しているのかな。
もちろん倫子さんはいろんな速度が早いので、私よりずっと早いんですけど。
たとえば学校で学んでいなかったわけではないと思うし、仕事に学びがないわけではないけれども、いま振り返ると「なんかそれじゃない」という気がしているんでしょうかね。
倫子
私、人材育成の世界に入る前は、研修とかの「座ってお勉強する時間」がすごく嫌いで、「時間の無駄だな」と思ってたんですよね。
えみ
わかります。
倫子
当時「大人の学び」というと、TOEFL や簿記の試験勉強のこと。わかりやすいゴールがあって、それに向かってやるのが勉強だと思っていました。
いまは「そこからずいぶん遠くに来たな」と思うけど、振り返るとけっこう長い間そういう定義を持ってたんですよね。
えみ
「勉強する」と「学ぶ」っていう言葉の使い分けも、最近はすごく進んだ気がします。
倫子
確かに!
えみ
私が子どもの頃は「勉強する」しかなかったように思いますけど、最近は「学ぶ」の方がよく聞く印象ですね。
倫子
確かに「学ぶ」って、あんまり言わなかったですよね。
「学び」「学ぶ」、そんなことを考えている我々がどこで出会ったかというのもこの自己紹介に含めておこうと思うんですけど、実際いつだったのか、私はあまり正確に覚えていないんです。
えみ
2011年か2012年だと思います。
倫子
いや、2011年は私、東京にいたので。たぶん2012年か2013年。10年前ぐらいです。
ニューヨークで会ったんですよね。
えみ
倫子さんが作ってくれた「学びの会」に入れていただいたんです。
倫子
確かに!そんな名前でしたね。あぁ、懐かしい。
えみ
でも最初はオンラインだったと思います。
覚えてます?倫子さんが開催してくれた、MOOC (Massive Open Online Course) の勉強会。
倫子
MOOC の勉強会。私、誰に対してやってたんですかね。
えみ
誰に対してだったんだろうな。私はお誘いを受けて参加した記憶があります。
倫子
そんなワークショップやったんでしたっけ。
えみ
倫子さんが「cMOOC っていうのがあるんですよ」って話をされていて、「あ、私、何年か前にそれ、受講しました。あれは cMOOC だったんだ。」みたいな。笑
倫子
はいはいはい。あー、なんか覚えてます。
これ聴いてる人は「MOOC って何だ?」みたいな感じだと思うんですけど。
えみ
大規模公開オンライン講座。
倫子
edX とか、Coursera とかね。
確かに。「cMOOC と xMOOC があって…」みたいな話を少人数のグループで話したんだと思います。
そしたら、そこにえみさんがいて、「cMOOC に参加してました」って発言されて、「こんなマニアな人がいる!」と思った記憶があります。
私、cMOOC について書いたブログがあって。散文的な、適当なメモみたいなブログなんですけど、いまでもたまにアクセスがあるんです。「誰かが cMOOC について検索してる」って不思議に思うことがあります。
いまの時代に cMOOC について検索するなんて、教育学部の学生さんとかなのかな。
えみ
いま使う情報というより、歴史を振り返る意味で、かもしれないですね。
倫子
確かに。歴史になってるのかも。笑
ふたりの出会いは「ニューヨークで、教育に関わっている日本人」として引き寄せられたご縁だったんですよね。
えみ
はい、引き寄せていただきました。
倫子
あっという間に10年経ちました。笑
人の学びに関わってきたえみさんが、いま特に興味があることは何ですか。
えみ
「いま」というわけではないですけど、私がおもしろいなと思うのは、学びがある時にぐっと進んだり、パタッと止まったりする。そういう動きに興味があります。
倫子
そういうものを作り上げる要因に興味があるんですか。
えみ
学びって、基本的には放っておいても進むもので、学習者の中に常に種火があると思っています。
でもそれがある時、ぐわっと燃え上がるきっかけに出会ったり、自然に発火したり。かと思ったら、すごく弱まったりもする。
それを観察する、見守ることが、とてもおもしろいです。
倫子
具体的にはどういう人が学ぶところを見ているんですか。
えみ
私が関わっているのは、日本人で英語を学んでいる人たちです。
たとえば、学校の英語が嫌いで、「英語って聞いただけでうんざりしちゃう」というようなはじまりだったとしても、何かのきっかけで、「こういうことだったんですね!」「だから自分はあのとき英語が嫌いだったんだ」みたいなことがわかったり。
「それじゃないんだったらできそう」とか、「いま考えると、あのイヤな経験も役に立つのかも」と解釈が変わったり。
それで、自分でブレーキをかけていたのが、一気にアクセルに変わるみたいな、そういう瞬間に立ち会うのはおもしろいことだなぁと思っています。
倫子
あぁ、私も似ているかもしれないです。
視点が変わるとか視野が広がるとか、その人たちにとっての障害、目の前で邪魔をしているものがなくなったり、ちょっと軽くなったりすると、自分で前に進んでいく。その瞬間が楽しいなと私も思います。
えみさんの場合は、(学びの対象が)言葉なので、苦手意識がある人にとってはすごく大きな物が目の前にあって、なかなか前に進めなかったりすると思うんですけど、私の場合はもう少し文化的で、育ってきた環境や体験してきたこと、周りにいた大人の常識などによって築かれている壁を扱います。
本人は壁とも思っていないかもしれないけれど、それがちょっと解けると、いろんなところに行けたり、いろんな景色が見えたりする。私はそういうタイプの学びに興味があります。
えみ
なんか思いがけず「似てる」って着地になりそうですけど。いいよね、別に。笑
倫子
笑 無理やりそうしてるわけじゃないですよね。
あともう一つ、私とえみさんが関わっているのは大人ですけど、「いまの時代、子どもがどう学ぶのか」にも興味があります。
子どもたちって一人で学ぶわけではないので、周りにいる親や学校の先生、家と学校以外のサードプレイスなど、いろいろなところで学んでいきますよね。
そこにいる年上の人たちが、子どもたちとどう関わることがいま一番求められているのかに興味があります。
いまの子たちの小学校生活とか、(自分とは)時代が違いすぎてイメージもつかないですけど、実際にある学校は(昔と)そんなに変わってないかもしれない。でも(子どもたちが)見てる世界は、私たちとは絶対違うんだろうなと思います。
えみ
もちろん時代というのは大きな要素ですけど、でも、たとえ同じ時代、同じ場所だったとしても、「別の人だから、きっとこの人の学び方は自分と違うだろうな」っていうのは、大前提として持っていたほうがいいような気がしますね。
倫子
あぁ、おもしろいですね。「世代が違わなくても」ということですか。
同じ世代の中を生きている同士でも、それぞれ学び方は違うかもしれない。
えみ
そうですね。「同じ世代、同じ国であれば同じ」と思うよりは、「別の人だから違う」と思ってはじめた方が、いろいろとスムーズにいく気がします。
倫子
でも自分が高校生だった頃を振り返ると、みんな同じような学習塾に行き、同じような試験対策をして、基本的には横並びで大学受験の勉強をやってたイメージがあります。
えみ
へー。倫子さんも「その中にいた」という自覚がありますか。
倫子
そうです。私、塾通い大好きでしたから。笑
えみ
好きで通ってる子は多くない気がするけど。
倫子
たぶん変わってたんだと思うんですけど、わかりやすい定規の中でゲーム攻略のようにしていれば、自己効力感も高く前進してる感も得られるので、すごくわかりやすいレールに意図して乗っていたという自己認識があります。楽しかったですけど。
えみ
学校が楽しかった?
倫子
楽しかったです。勉強がメインの学校じゃなかったので、文化祭、体育祭、山登りとかがあって。
でもそれだけじゃ物足りなくて塾に行ってて、塾も楽しかった。
だけど多様な感じじゃなかったです。学力という意味では横並びで、全員が “生物Ⅱ” の勉強をするとか、多様も何もなかったような気がします。
えみ
なるほど。じゃあ「学校は社交の場、勉強は塾」みたいに分かれてたのかな。
倫子
分けてたと思いますね。(自分だけじゃなく)友達もそうしていました。
だけど学校でも、何人かおもしろい授業をしてくださる先生がいて、テストや受験の対策じゃなく、「学ぶのが楽しい」と教えてくれた先生がいました。
えみ
すごいな。高校生の時点で「学ぶことが楽しい」って知っていたんだ。
倫子
それはやっぱり先生のおかげだと思います。化学の先生は食事と掛け合わせて、数学の先生は古典と掛け合わせて教えてくれていて、そういうのが楽しかったんです。訳わからなかったときもいっぱいありましたけど。
えみ
素晴らしい。
いちおう私も先生方の名誉のために言っておきますけど、うちの学校にもきっといい先生はいらっしゃったと思います。笑
倫子
社会人のときはそんな体験をしたこともほとんど忘れてましたけど、教育や人の学びを考えるようになって、「あぁ、原体験にああいう先生の関わり方とか、こういう自分の体験とかがあったんだな」と思うようになりましたね。
えみ
アメリカの教育大学院のクラスで、一人ずつ「好きだった先生の話をしてください」って言われるのが何度かありましたけど、倫子さん、その経験あります?
倫子
な、ないです。笑
えみ
私がいたのは、教員が集まるクラスだから。
倫子
そうですよね。「教員になりたい」「教員をより良い教員にしたい」と思う人が来ている場だから。
えみ
そういうクラスの最初には、「自身の先生の思い出を絡めて自己紹介してください」みたいなのが回ってきて、そのたびに「うわ、話すことないな」っていつも思ってました。笑
倫子
えみさんのプログラムは、教育学部のどういう名称のものだったんですか。
えみ
最初は TESOL (Teaching English to Speakers of Other Languages) なので、「英語教育学科」みたいな感じでしょうか。
倫子
その後は?
えみ
その後は一度コミュニケーションに移って教育から外れるんですけど、また教育に戻って Curriculum and Instruction(カリキュラム・教育指導)という科に入っています。
倫子さんは?
倫子
私のは「教育」と「テクノロジー」と「イノベーション」の3語が並んでいる学科名でした。
学生のうち、先生など学校という箱に関わった人は3割ぐらいで、私は学校で教えたことがない7割の方でした。
「テクノロジーが関わると、学びはいろんなところで変わるよね」みたいなことに興味がある人がごちゃっと混ざったプログラムです。
えみ
うちも隣にそれに近い学科があったので、そこの授業にお邪魔したのを覚えています。
私の学科は教員の人たちが多かったので、「やっぱり学校に対してすごく良い印象を持っている人が多いんだなー」って思ってました。笑
倫子
笑 距離を取って。
えみ
「来るとこ間違えちゃったかな」みたいな。笑
倫子
教育学部には熱い方々が多いですよね。
私たちの自己紹介では、「テクノロジーに関わることを学んで何がしたい」みたいなのが多かったんですが、私がよく話してたのは、日本の大きな会社の部長さんたち向けの研修をやっていたときの体験です。まだモバイルラーニングとかはそんなに普及していなかった時代のことです。
「面倒くさいな」と思って研修に参加されている方がいる中で、休み時間にスマホをいじるときは嬉々としているんです。
「この人たちもスマホの使い方を学んだんだよな」と思うと同時に、すごくシンプルに作られていれば何歳になってもテクノロジーを学べることを目撃して、もうちょっと研修の体験もおもしろくできないかなと思って来たんです、みたいな。
えみ
へぇ、素晴らしい。
倫子
いや、素晴らしくはないんですけど、なんか普通に謎だったんですよね。
「この人たち、どうやったら楽しく研修に参加してくれるんだろうか」と思っていたら、スマホを持って新しいことを学んでらっしゃる。
「それでここに来ました」というのが私の自己紹介ストーリーでした。
えみ
いいなぁ。私は毎回「うわ、自己紹介。なに言おう、困ったな」と思った記憶しかないです。
教育に燃えている方や「こんな素敵な先生がいたので私も目指しました」みたいな話が多い中、「日本から来ました。私は学校があまり好きじゃなかったので、そういう子にも学びが起きるようになったらいいなと思って、その方法を探しています」みたいな、そんな話をしてた気がします。笑
倫子
笑 いいじゃないですか。重要なことですよね。
本当に重要だと思います。さっきのテストの話じゃないですけど、やっぱり学校のフォーマットが楽しい人とそうじゃない人で言うと、そうじゃない人のほうがマジョリティだと思うんですよね。
いわゆるテスト対策で、詰め込んで、戦略を立てて、攻略して、わかりやすい答えをゲットするみたいな勉強が好きじゃない人が圧倒的多数だと思うので、えみさんみたいな人が教育学に行くって重要ですよね。
えみ
たまたまそういう流れになっただけなんですけどね。笑
倫子
笑
じゃあ、第1回はこんな感じにしますか。たぶん今後はもう少し「こんなのあったんですよ」「これ、どう思います?」と具体的におしゃべりする感じになると思うんですけど、今日はまったりで。
どんなことが起きるかわからないポッドキャストですが、定期的に発信できればと思ってます。
えみ
では、次回まで。
倫子
はい、ではでは。さようならー。
