ChatGPT / 英語学習とAI / DeepL / 翻訳 / 辞書 / 大学院の課題 / 無料版と有料版 / Grammarly / 校正 / 調べ物 / 対話 / 使い手のスキル / 英語的発想 / プロンプト / 検索 / 画像生成 / 創造性 / 余白 / 思考への影響
えみ
このポッドキャスト『まなびのはなし』では、大人の学びをサポートしているふたりが、それぞれ見つけた、考えたことを話したいから話しています。
倫子
はい、よろしくお願いします。
えみ
お願いします。
倫子
今日は、いま話題の ChatGPT について話してみようと思います。
えみさんが ChatGPT について聞いたのは、いつ頃ですか?
えみ
(2022年の)年末ぐらいですかね。
倫子
公開されたのが確か11月だったと思うので、結構すぐ後ですね。
えみ
そうですね。その後ちょっとしたら受講生たちが使っていました。私自身は使ってないんですけど、みんな使っています。
倫子
え、受講生が使っている。英語を学んでいる人が使っている?
えみ
英語を翻訳したり、日本語で言いたいことを英語にしたり。それは DeepL でもできるけれど、まずはそういうことを試してみたり。
最近、2月になってからかな。YouTube に「英語学習のためにどう使ったらいいか」というアイディアがたくさん出てきているので、それを参考にしながら、自分が書いたものを添削してもらったり、会話練習のためにチャットして「こう来るのか」を知ったうえで答えを用意したり。
学習者から「自主学習にやってみました」と報告してもらっています。
倫子
ふーん、なるほど。ChatGPT が話題になる前は、えみさん、AI を使ったツールって何か使ってましたか。
Word にあるスペリングのオートメーションも、ある意味 AI だったんですかね。
えみ
スペルチェッカー?
倫子
自動で提案してきたりするじゃないですか。あれは AI だったんですか。
えみ
AI って感じはしないですね。なかなか学習してくれないので。笑
私はスペルチェッカーもあんまり使ってないですね。
ChatGPT 前、受講生たちは DeepL を使うことが多かったです。でも私は DeepL もほとんど使ったことがないです。
倫子
そうなんですか。いままで、辞書は何を使ってたんですか。
えみ
辞書はいつも、いろんなものを使っています。私はアルクの英辞郎が好きで。厳密に言うと、あれは辞書じゃないんですけどね。
あとは Google 検索から飛んで、辞書を引いています。アナログ人間なので。笑
倫子
アルク、私も検索中によくヒットします。知らない英単語に出会ったとき、「英単語+とは」って入れて検索するとだいたい辞書に飛ぶじゃないですか。それで英辞郎に出会う確率が高かった時代がありました。
私は2021-22年ごろから DeepL っていう AI 翻訳ツールの有料版を使ってたんですよね。
有料にしたのは、日本語の PDF をすっごく短い納期で英語にしなきゃいけない、業者に頼むのでは間に合わないみたいな作業が発生した時に「もうしょうがない」と思ったからでした。原稿の PDF をどんってアップロードして、英語になって戻ってきたものを自分で校正する。その作業のために年間会員になりました。
その後は Google でサクッと調べちゃえばいいものも多かったのであまり使う機会がなかったんですが、今夏から大学院に行くようになって、また使い始めました。
たとえば研究結果を調べているとき、長めの論文がたくさんあるじゃないですか。論文のアブストラクト(要旨)や概要が画面上にドバッと出てきても、それを読むのは結構疲れるので、それをガーッとコピーして DeepL に入れてしまう。それで「何の論文なのか」「何が言いたいのか」を日本語でサクッと見る、という使い方です。Google 翻訳でも同じかもしれないなと思いますけど。
えみ
DeepL は有料版だと優秀?そういうことではない?
倫子
たぶん有料版だと PDF とか、ちょっと複雑なやつができるんじゃなかったかな。あんまり記憶がないです。今は ChatGPT が出てきたので、DeepL の契約を更新するか疑問を感じてます。
あとは Grammarly っていう AI が訂正してくれるブラウザーの拡張機能。私は無料版をずっと使ってたんですけど、大学院に入ってから有料版に切り替えたんですよね。それはもう超優秀で。
ライティングで、書くのは自分でゼロから書くんですけど、Grammarly に校正してもらうと「ここが冗長です」「わかりにくいです」みたいなフィードバックが来て、結構いろいろツッコミが入るんですよね。そのツッコミをもとに自分で書き換える、みたいな使い方です。
Word のスペルチェックだと波線が出るじゃないですか。Grammarly でも書いていくと線が出てくるんですけど、色や種類がいくつかあって、冗長さのほか、スペルやスペースの使い方を突っ込まれたりします。私はよくカンマを間違えるんです。
私にとっては、DeepL と Grammarly っていう2つの AI ツールを使っていたところに ChatGPT がやってきた、という感じです。
えみ
じゃあ今はChatGPTに乗り換えてる?
倫子
いや、Grammarly ができることは ChatGPT にはできない気がしています。やっぱりちょっと違うんですよね。表現の世界の Grammarly と、調べ物や対話、アイディアをもらう ChatGPT には補完性があると思います。
たとえば「何々について考察せよ」っていう課題があったとき、もちろん教科書で読んで授業でも学んだけれども、「その何々ってなんだっけ」「もっと深く知りたい」という場合はまず ChatGPT を使います。
ChatGPT で「その何々について、世の中にどういう議論があるか教えてくれ」と書くと、「賛成派はこういうことを言っていて、反対派はこういうことを言ってるんですよ」と返ってきます。で、賛成派のことはすぐわかるんだけど、反対派のことがよくわからない時、また ChatGPTに「その反対派の人たちは具体的に何て言ってるか教えてください」と言うと、またバーって返事が来る。で、「その見方の落とし穴は何ですか?」みたいなことを聞くと、「この議論の穴はここにもあって…」みたいな感じで、「なるほど」って。そんなやり取りになります。
あるいは「これが起きたことについて、時代背景を踏まえて考えよ」みたいな課題なら、ChatGPTに「xx年のアメリカの主要な出来事は何でしたか?」「マクロ経済、政治で起きてたことを教えてください」みたいに言って、答えをもらいます。もちろんそのままペーパーには書きません。それを踏まえて自分で考えたことを Grammarly に書き出します。
えみ
なるほどなー。
今はまだ使い方を模索中みたいな段階だと思うんだけれど、これまでに「そういうものがあったらいいな」と思っていた人は ChatGPT をすぐに利用している印象です。
逆に今まで「そういうアシスタントがいてくれたらいいな」「Google 検索ではここが聞けないな」っていうニーズが高まってなかった人に与えられても、どう活かしていいかわかんない状態でしょうかね。
倫子
確かに。面白いなと思います。今までも「Google に聞けばいいのに」って思う場面で、使わない人っていましたよね。必ずしも使おうと思わない人って、どのツールの時もいるんだろうなと思いますね。
えみ
たとえば、うちの受講生は普段どういう検索してるか、辞書も含めてどうやって調べてるかっていうのを私と一緒にやってみる時間をもつんです。
倫子
ああ、重要ですね。
えみ
そのときに自分で、たとえば自分に必要なテキストや YouTube を探すとか、ある単語について、どの辞書を使って、辞書のどこを読んで、どう解釈してるかを話してもらうんだけれど、あんまり使えていないことが多くて。
なので、道具が良くなるとか使いやすくなるっていうのはすごく良いことなんだけれど、やっぱり使い手側のスキルがより問われることになります。
倫子さんのように、もともとそういうのが使いたかった人にとって AI ツールは本当に ”待ってました” ですよね。
倫子
笑 単なるオタクですけどね。
えみ
あと、ああいう道具はアメリカ発信なので、まず言語的に英語ネイティブ。
倫子
そうですね、確かにね。
えみ
日本語だとしても英語的発想だし、プロンプトの出し方にも慣れが必要です。「それ、どういうことなの?それはどういう意味?」などが聞けるかどうかって、結構大きいところなのでね。
倫子
確かに。
いま聞いてて2つ思ったことがあります。1つはヘルプデスクとか、ヘルプの記事。たとえばうちのお母さんが携帯電話会社に問い合わせなきゃいけない問題が発生した時に、ちょっとググってその会社のサイトに行ったら、だいたい100%ハウツーが載っているんですけど、お母さんは「そこに行こう」って思わないんですよね。「どうしよう、どうしよう」って困って、私に LINE が来るんです。
ググったら記事があるんですけど、今までデフォルトが「どうしよう、どうしようって家族に聞く」でやってきた人は、小さな画面にわざわざ自分の問題をタイプして、言語化して検索しないんだよなというのを思い出しました。
もう1つはインプットが重要という点、本当にそうだなと思います。
ChatGPT は言語のツールで、人間に話してるような感じで聞けばいいから、私にとっては慣れてるというか、使いやすいんです。ただ、同じ会社が作った Generative AI という画像を作ってくれる AI は別です。
アメリカでは1~2ヶ月前に流行ったんですよね。日本でもたぶんテックの人は知ってる。
えみ
DALL-E とか。
倫子
そうそう。たとえば「ゴッホ風の絵のスタイルで、マクドナルドのポテトを食べているテディーベア」と入れたら画像が出てくる、みたいな。けど、その「ゴッホ風にしようって思いつく」とか、「マクドナルド食べてるテディーベアを作ってみたいな」とか、そもそもそういうアイディアがないと、あんまり面白い絵が出てこないんですよね。
画像生成のサイトに行くと「たとえばこういうのがあるよ」っていうのをたくさん見せてもらえるんですけど、まったく思いつかないようなことがいっぱい並んでて、私は「すごい疲れるツールだな」って思いました。
えみ
あー、なるほどね。
倫子
AI ができることはたくさんあるんだけど、自分のインプットによってアウトプットがすごく限られてしまうから、自分のクリエイティビティの狭さを再確認することになって。笑
えみ
いやいや。今のは2つとも面白いですね。
1つめの、今までどうしていいかわからないことを、ヘルプデスクや家族に聞いていた人にとっては、ChatGPT だったら気兼ねなく聞けるということがあるかもしれません。ヘルプデスクは電話が繋がらないし、家族に言うと「ググれ」って言われるから。笑
英語学習もそうで、先生にいちいち聞くのは嫌だし、近くにネイティブもいないから見てもらいにくい。ChatGPT ならちょっと聞くのに便利。そういう使い方をしていく人もいるのかなと思います。
でもまあ、それすらしないのかもしれないけどね。笑
倫子
笑 分かれますよね、きっと。
えみ
2つめの言語化については、名前に「チャット」って入ってるぐらいなので、特に言語の中でも書き言葉が上手な人にとってはすごく便利かなと思います。
でも、普段学習者の方とお話ししてても、「うまく言葉にならない」とか、「自分でも何を話してるかわからない」とか、そういうところに良さが隠れていると感じることがあるんです。言いかけて、「あ、うまく言えないからやっぱいいです」。でも「そこ聴かせて。そこ大事なとこ!」みたいな。
そういうタイプの人と ChatGPT は、今のところまだちょっと噛み合わないかなっていう感じがしてます。
倫子
欲しいものが明確にある人向けな気もしますよね。
えみ
そこがアメリカ的って思うんですよ。笑
倫子
確かにそうですね。欲しいものが具体的じゃなくてもいいけど、ありたい姿というか、「こういうのあったらいいな」がある程度ないと、っていうのは確かにありそう。うーん。
えみ
だから AI を使うことがもっと生活に浸透していった後、日本の人たちの言葉の使い方とか、考え方、質問する姿勢とかにどう影響してくるのかに興味があります。
自己紹介の回で倫子さんが言っていた「これからの子供たちがどういう学び方するのか」にも関係するけれど、ChatGPT がある時代に生まれ育った子供たちの質問の仕方、情報の求め方に、どんな影響が出てくるのか、楽しみにしています。
倫子
Google 検索で単語を入れると、その先に「他の人はこういうのを検索してますよ」って出てくる機能があるじゃないですか。そうやって埋められちゃうと、「あれ、他の人はそんなのを調べてるんだ」って脱線しやすいなって思います。
面白いなとは思うんですけど、AI が行間を埋めちゃうと、そもそも自分が聞きたかったこととは全然違うのが出てきて、「それじゃない」って。
えみ
私、そこをクリックしたことないかも。
倫子
たとえばですね、教育的な話を調べようと思って「保育園」と入れた場合。自分の中では「保育園では…」という続きがあったんですよ。でも「保育園」で検索しちゃったから、「入れない」「落ちた」とかが出てきて。
えみ
あー!
倫子
私が知りたかったのは「保育園で行われてる学びが、小学校に続かないのは何でだろう」だったはずなんだけど、「保育園落ちた」が出てきたことで自分の思考が遮断されてしまいました。
だから子供時代から ChatGPT があることによって、効率性と余白、スペースの部分がどうなるのかみたいなことをちょっと考えたりします。
ゴールとか特に決めずに「散歩に行こうかな」と思って検索を始めた時に、「あっちですか?」って提案されたら、急に奪われるみたいな感じになるのかなって。
えみ
そうね。余白、効率。どうなっていくのかな。
今後、AI はどんどん進化していって、何でもできるようになっていくだろうと思います。でも、もしアメリカじゃなくて、日本生まれの AI だったら、たとえばどんなに質問しても「そんなこと、人に聞くな」って返ってきたり、「難しいですよね…」とはぐらかされたり、そういうことがあってもいいのかな。笑
倫子
確かに。世界中の人が同じツールを使うって、なんか不思議ですよね。Google 検索の時はそういうのあんまり、よくわかんなかった。
えみ
Google 検索によっても、みんなの思考に影響があったのかもしれないけれど、やっぱり AI は ”相手” っていう感じがあるので、その影響は結構大きい気がしますね。
倫子
パーソナライズされまくってる感じがしますもんね。Google 検索がパーソナライズされるのは、まだ「うまく編集されたイエローページを渡される」ぐらい。
えみ
まだね、道具感がある。でも、AI だと話し相手、パートナーっていう感じが強く出ていますよね。
倫子
そうですよね。アメリカではすでにカウンセラーやセラピストの一部の作業は AI のチャットになってきているとよく聞きます。もちろん人間にしかできないことは残るんですけど。興味深いですね。
えみ
今は「AI には感情がない」とか、そういうことに焦点が当たっているけど、いずれそれっぽいことはできるようになるだろうと思います。そうではなくて、人間の方が、AI に寄っていってしまうだろうなっていうところに興味があります。
倫子
面白いですね。ChatGPT がリリースされて、まだ3ヶ月ぐらいしか経っていないのに、こんなにいろんな人が話しているっていうスピード感とか影響の大きさに「わあ」って思います。1年後にまたこのポッドキャストで話すときは全然違う話になっていそうな気もします。
えみ
その頃には私も使っているのかも。どうかな。笑
倫子
笑 えみさんの使い方がどういうものか、すごく気になります。
えみ
あ、でもね、一個やっておきたいなと思っていることがあるんです。英語学習のよくある質問。たとえば「どうやったらペラペラになれますか?」とか、「おすすめの勉強方法は何ですか?」とか。そういうのを今のうちに ChatGPT に聞いておいて、その答えが何ヶ月後、何年後のスパンで、どんなふうに変わっていくのか、その記録はとっておこうかなと思っています。笑
倫子
笑 もはや研究。でもあれって同じ質問を私とえみさんがしても、同じ答えは返ってこないと聞きました。
えみ
返ってこないですよね。今の時点でも、聞くたびにたぶん違う答えをくれると思うんですけど、それにしても、きっと後々進化して、「なるほど」っていう答えを出してくれると思うので。
倫子
確かに。
えみ
答えのない、大変に難しい質問に対して、どんな答えをくれるのか、興味がありますね。
倫子
そもそも「ペラペラ」っていう擬音語をどれだけのスピード感でキャッチしてるんでしょうね。DeepL も日本語の擬音語には苦しんでる気がします。
えみ
彼らは日本語の上手な英語ネイティブですからね。笑
倫子
またいつかこのテーマについて話せればと思います。
えみ
ね。楽しみです。
じゃあ、こんな感じでしょうか。
倫子
そうですね。今回はこんな感じで。
えみ
はい。『まなびのはなし』は毎週1回配信予定です。それではまた次回。
